先日、偶然にも4・5年前にした数分のダンスパフォーマンスを見ていたという方にお会いして、私の踊りを鮮明に覚えてくださっていて、本当に嬉しかった。
自分の知らない所で、誰かが自分の存在を忘れないでいてくれた事が嬉しくてたまらなかった。
そんな嬉しい出来事を通して昔の事を思い出す事で、日本に帰ってくるきっかけとなった出来事を思い出したのでした。
あれは、2007年だったか・・・。私はとある作品にダンサーとして参加した。
クリエーションの段階で、面白い偶然でデュエットの様なものが出来上がった男性ダンサーと共にメインキャストに選んで頂いて、ダンス作品の他に、ショートムービーにも参加させて頂いて、色々な経験をさせて頂いた作品。
ポルトガルの第二の都市、ポルトにある歴史ある劇場Theatro National Sao Joaoで踊る事が出来て、シルエットではあるけれどポスターにもして頂いて、ポルトの街中や地下鉄の中などに張られたポスターを見る度に嬉しかったものでした。
全公演が終わり、違う劇場での違う作品にも出演していた私は公演後も街に残り、地下鉄で行われた同僚達の別のパフォーマンスなどを見に行ったりしていた。
公演の内容が、ショートムービーから始まり(私と男性ダンサー出演)ダンス作品という形だったからか、私はアジア人だからすぐ分かるというのもあるかもしれないけれど、同僚達のパフォーマンスを見ていると、みるみるうちに人に囲まれたのだった。
この前のダンスを見た。あなたのダンスが好きだった。あなたが男性を見る時の目が印象的だった。あなたはナニ人?どこから来たの?いつまでここにいるの?またあなたのダンスが見たい。などなど、様々な声を掛けて頂いた。
声を掛けてくださった方達はマダムが多かったけれど、ダンス関係者という訳ではなく、ポルトに住む奥様方という感じ。あぁ、こんなに沢山の方がダンスに興味を持って見に来てくれていたんだな〜と改めて思ったのだった。
勿論、それまでにいくつもの公演をヨーロッパでしたけれど、こんなに反応が返って来たのはその時が初めてだった。
その後も、街を歩いていると、わざわざお店から出て来てまでして話しかけてくれた方もいたりした。
インターネットカフェの中から出て来て、あなたの踊り見たわよ!いつまでもここにいて欲しいわ。また踊りを見せて。と言ってくれたのを今でも良く覚えている。
あぁ、これが自分の国・日本で、自分の故郷で出来たらどんなに幸せな事だろう・・・と強く思った。
ポルトの人たちが喜んでくれた事、それを伝えてくれた事で、自分は本当に自分の踊りを見せたい人に見せられているだろうか・・と考えたのだった。
本当は、そう思った直ぐ後に日本に帰ろうと思っていたのだけれど、ずっと一緒に働いてみたかった振付家との仕事が決まって、それも挑戦してみたかったから、帰国を遅らせたのだった。
でもその時点で自分の興味はお客さんとの関係という所にあって、最後にした仕事はツアーもあって、同じ作品を何度も踊る機会が多い中、自分のしている事に大きく疑問を持つ様になっていた。
ポルトの作品の何倍もの公演数があったにも関わらず、お客さんとの接点はほとんどなかったのだった。
ポルトでの作品に対するお客さん達の反応が、私の本当にやりたい事に気づかせてくれた大きな機会になった事は確か。
それから日本に帰って来て、まずは地元を拠点にダンスを発表したいと思い、そしてダンスを見るのが初めての人でも同じ時間、空間をどうしたら共有出来るだろう・・と考えてパフォーマンスを企画したのだった。
でも、いつの間にか初心を忘れてしまっていた所があったかもしれないな〜と、先日偶然お会い出来た方のお陰で気づく事が出来た気がする。
これからまたダンスを創って行く為にも、改めて思い出せて良かった。
余談だけど、ポルトのTheatro National Sao Joaoは私の人生も大きく動かしたと言っても過言ではない。
なぜなら、旦那さんとお話するきっかけになったのもTheatro National Sao Joaoだから・・・。
とある振付家のレクチャーでインタビュアーをしていた旦那さん。世界中で公演されている作品の中から、その日旦那さんが選んで見せた映像の一つがTheatro National Sao Joaoで行われた公演だった。
あーー!思い出のSao Joao!!!と興奮したのでした。こんな偶然が不思議な縁へと繋がった。
人生何が起こるか分からないものだけれど、意外と繋がっているものだな〜と思います。
思い出の大切な気持ちを大切に、これからも頑張ろう。